世の中には、歯に関する常識みたいなものがあります。
・「むし歯は削って詰めれば治る」
歯は、一度大きな穴が空いてしまうと再生しません。むし歯の治療は、歯を元通りに治しているのではなくて、むし歯菌に冒されたところを削り取って、別の何かで補充しているだけなのです。例えばこれが骨でしたら、ギプスなどで固定しておけば元通りにくっつくのですが、歯はそういう風には治りません。削れば削っただけ弱ってしまうのです。むし歯にならないように、何より予防が大切なのです。
・「むし歯は早期発見・早期治療が大切」
基本的に早期発見・早期治療は大切なのですが、ごく一部に例外があります。それは、子供の初期のむし歯です。そのむし歯が進行するものかそうでないかを慎重に診断して、進行しにくいものに関しては、絶対に削らないようにしなければなりません。
フッ素やレーザー、キシリトールを使ったり、また生活習慣の改善をしたりすることで、再石灰化(歯の再生)を目指して経過を観察することが大切なのです。早期治療も、時には行き過ぎになってしまうことがあるのですね。
・「歯医者は、歯が痛くなった時に行くところ」
あなたは、どんなときに歯医者に行きますか? 痛くなった時? それも、痛さが我慢の限界を超えた時、なんていうことはないですか?
欧米の先進国では、痛い時はもちろん、痛くなる前に、痛くならないように行く、歯を長持ちさせるために歯医者に通う、という意識が当たり前になっています。
歯科医も、出来るだけ患者さんの歯を削りたくないし、また抜きたくないのです。
むし歯予防、歯周病予防のために、気軽に通えるかかりつけの歯科医を見つけて、痛みのないうちから定期的に診てもらうのが一番です。
・「毎日朝晩自分でしっかり磨いていれば、歯は悪くならない」
ここで一つクイズを出します。次の二人のうち、年を取ってからも健康な歯をたくさん残しているのはどちらでしょう?
1.真面目に毎日せっせと歯磨きをして、数年に一度歯医者に行く人
2.歯磨きはまあまあ、でも三ヶ月に一度歯医者でクリーニングを受けている人
正解は、2番です。完璧に磨いたと思っていても、歯と歯の間や歯の裏側には磨き残しがあるものです。また、必要以上に力を入れて磨く人は、歯がすり減ってしまっている場合もあります。歯医者に行けば、歯科衛生士が機械を使って、歯のばい菌や頑固なばい菌の膜なども綺麗に取り除いて、新しく菌がつきにくいようにしてくれます。
みなさん、どちらがいいですか?